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九谷焼作家 故・武腰敏昭さん

登録日:2022年8月26日

九谷焼とSDGs

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九谷焼に従事する作業員の健康を守る

ために、さらに下水に絵具を流すことで

起こる環境被害にも目を向けたのです。

 

小鳥の命から無鉛釉開発を決意

30年以上前に経産省から(特に食器には)「鉛はダメですよ。」ということを言われていたのですが、鉛というのは上絵具としては使いやすいのです。重いですから、筆から下りてきやすいのです。また光沢も綺麗ですし、なかなかやめられないのですが、それでも始めたきっかけがあります。

以前、自宅に雀の巣がありました。雛が生まれた頃になると、どこからともなくセグロセキレイが来て雛を巣から落とすんです。死んでいくのがかわいそうで、巣の下にスポンジを置いておいていました。そうすると命は助かるのですが、足を骨折するのもいるため、ストローを添え木に足を固定したりしていました。そんなことから私に警戒心を示さずに近くに寄ってくる雛が5〜6羽いたのですが、その雛がある日、絵具をポンポンとくちばしでつついたと思ったら、痙攣して死んでしまったんですね。

鉛が原因だったのです。それで「これはいかん」と強く思い、無鉛釉薬の開発をはじめました。九谷焼に従事する作業員の健康を守るために、さらに下水に絵具を流すことで起こる環境被害にも目を向けたのです。私も何年か前に体を見てもらったら、鉛は私の体にも蓄積されていました。

最初は全てが未知の世界だったので、塗りやすい培養剤や窯で焼いた後も剥がれにくいかなど部屋中を絵具のサンプルで一杯にしながら取り組んでいましたが、7割か8割を失敗していました。普通の絵具はふのりで溶くのですが、それを多く入れると不透明になりやすかったり、CMC(化学ふのり:カルボキシルメチルセルロースナトリウム)も100gに対して1.5g入れたらどうなるかなど、全部のテストしながらデータを出していたのです。その実験の段階で既に十数年費やしました。今では、通常の鉛絵具で3回くらい窯で焼くと剥離するような状況でも、無鉛釉薬では剥離しにくい状態まで完成度を上げることができました。さらに鉛絵具より発色もいいくらいに仕上がっています。

 

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3点とも2017年1月11日撮影(画像提供:ウルトラアート)

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15年にわたり研究を続けてきた無鉛釉薬のサンプル (個展「わが人生の歩み」より)

 

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2017年1月11日撮影(画像提供:ウルトラアート) 

近寄ってみると「技術」が見えてきます。

離れてみると「感性」が見えてきます。

だからその両面が大事になります。
 

 

正解のない世界〜これから作家を目指す人たちへのメッセージ

工芸品に限らず、絵画などの芸術作品は、近寄ってみて良くて、離れてみて良くて、ということが大事になります。近寄ってみると「技術」が見えてきます。離れてみると「感性」が見えてきます。だからその両面が大事になります。さらにもう一つ。その二つが揃っていても、それを作り出そうという「活力」がないとできない。「技術」「感性」そして「活力」がものを作るときの三要素だと思います。また、外からの意見がものすごく大事。いつも自分に言い聞かせているのは、自分が思う今の自分の力より、実際はその三割下だと思えと戒めています。あと、目線を下から上へということも心がけています。なるべく皆さんと同じ立場に立って、それが自分の弟子であったとしても、なるべく丁寧な言葉を使い、育て上げる意味においても上から目線にならないようにしています。ずっと見上げるような立場にいたいと思っています。

他の様々なクリエーターに尋ねられても「これは正解とは言えませんけども」という姿勢で他の案を提案したりすることがある。やはり比較しないとわからないこともあると思う。私も必ず一つ作ると、もう一つ必ず作り、比較するようにしています。やはり、先に作ったものの方が良い場合と、後に作った者の方が良い場合と様々です。やはり正解のない世界に身を置くというのはずっとこういう世界を生き抜いていくということだと思っています。

 

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 改組第7回日展 無鉛釉 王鳥の如く (個展「わが人生の歩み」より)

武腰 敏昭 氏

陶歴

1940年
昭和15年2月1日
能美市寺井町(現在)に生まれる
 
1962年
昭和37

(22歳)
 

金沢美術工芸大学卒業後陶芸の道に入る
 
1963年
昭和38 
(23歳)
 
日本現代工芸展 初入選 第六回日展 初入選 以来連続入選
1980年
昭和55 
(40歳)
 

文化庁主催第十九回県展選抜展に置いて文部大臣賞受賞
第十二回日展において作品「容」特選受賞

1981年
昭和56 
(41歳)
 
和倉温泉(株)加賀屋“渚亭”貴賓室 壁面レリーフ制作
 
1982年
昭和57 
(42歳)
 
九谷焼資料館ホール壁面モザイク「鳳凰の図」制作
 
1983年
昭和58 
(43歳)
 
(株)北國銀行 壁面モザイク「望郷」制作
 
1985年
昭和60
(45歳)
 
(株)小松製作所新研究所 エントランスホール壁面モザイク「未来」制作 総理官邸ご招待
1986年
昭和61
(46歳)
 
第十八回日展において「蒼い花器」特選受賞
 
1988年
昭和63 
(48歳)
 
第二十回日展委嘱に推挙される
 
1989年
平成元 
(49歳)
 
第二十一回日展審査員に就任 
 
1990年
平成2
 
(50歳)

 
日展会員に就任
平成三年用お年玉付き年賀はがき「舞い」原画制作
富士通総合センター壁面モザイク「拓く」制作 
1993年
平成5

 
(53歳)


 
第二十五回日展審査員に就任
能美市泉台町(現在)に日本最大のビッグモニュメント
「『甦』世紀をこえて」を制作
寺井町文化賞受賞
1994年
平成6
 
(54歳)

 
第四回日工会展において作品「春来たるらし」大賞受賞
第二十六回日展において「しずか」会員賞受賞
根上総合文化会館“タント”壁画「宙」制作
1995年
平成7 
(55歳)
 
第二十七回日展審査員に就任
 
1996年
平成8 

 
(56歳)


 
日展評議員に就任
北國文化賞受賞 
佐川印刷(株)エントランスホール陶壁「春来るらし」制作
1997年
平成9

 
(57歳)


 
第七回日工会展において作品「春来るらし」内閣総理大臣賞受賞
和倉温泉(株)加賀屋“あえの風”壁面レリーフ
「のどかなりあえの風」制作
1999年
平成11
(59歳)
 
手取郷斎場ロビー陶壁「豊穣の郷」制作
 
2000年
平成12
 
(60歳)

 
石川県立看護大学エントランスホール大陶壁「美しき生命」制作
NHK焼物探訪に出演タイトルは「ぐい呑から壁画まで」
2001年
平成13
 
(61歳)

 
石川県文化功労賞受賞
第三十三回日展において作品「静寂」内閣総理大臣賞受賞
2003年
平成15
 
(63歳)

 
薬師寺 大講堂復興記念に大皿「昇陽」を奉納
金沢医科大学病院エントランスホール陶壁
「やすらぎ、癒し、再生」制作
2005年
平成17
(65歳)
 
佐川印刷(株)厚木工場エントランスホール陶壁「世界へ」制作
2007年
平成19
(67歳)
 
第三九回日展審査員に就任
 
2009年
平成21
(69歳)
 
日展監事に就任
 
2010年
平成22

 
(70歳)


 
日展理事に就任
日本芸術院賞受賞「湖畔・彩釉花器」
天皇皇后両陛下主催の茶会にご招待を賜る
日本芸術院会員に任命される
2011年
平成23

 
(71歳)


 
宮中において歌会始の儀に陪聴者としてご招待を賜る
日展常務理事に就任
天皇皇后両陛下主催の茶会にご招待を賜る
第四十三回日展審査員に就任
2013年
平成25





 
(73歳)






 
国宝薬師寺展金沢開催記念として無鉛釉水指「古都」を奉納
皇居吹上御所において天皇皇后両陛下主催の茶会にご招待を賜る
伊勢神宮式年遷宮を奉賛して無鉛黄金赤釉「王鳥」を献納
十一月式年遷宮奉祝祭にご招待を賜る
第四十五回日展審査員に就任
2015年
平成27
 
(75歳)

 
能美市民栄誉賞受賞
金沢駅コンコース陶壁無鉛釉「王鳥」制作
改組 新 第二回日展審査主任に就任
2016年
平成28


 
(76歳)



 
薬師寺国宝「吉祥天女像」の前に無鉛釉薬大香炉「王鳥」奉納
薬師寺修二会花会式で散華「王鳥、古都、王鳥の如く」が配布される
(株)東振精機 玄関ホール陶壁無鉛釉「王鳥」制作
2017年
平成29
 
(77歳)

 
改組 新 第四回日展審査主任に就任
天皇皇后両陛下・秋篠宮御夫妻に作品解説の大役を務める
2018年
平成31
(78歳)
 
日本無鉛釉薬推進委員会 文化庁長官賞受賞
 
2019年
令和元
(79歳)
 
改組 新 第六回日展審査主任に就任
秋篠宮夫妻に角皿「王鳥」を進呈
2020年
令和2
 
(80歳)

 
文化庁主催 日本博 「工芸二〇二〇」運営委員
金沢港クルーズターミナル陶壁無鉛釉「航海をおえて」制作
2021年
令和3
 
(81歳)

 
能美市九谷焼美術館|浅蔵五十吉記念館|にて
個展「わが人生の歩み〜陶壁と無鉛釉の世界〜」を開催
7月28日 逝去 叙従四位、旭日中綬章追贈

協力:
能美市九谷焼美術館 北國新聞社 加賀屋 日本芸術院

 

外部リンク

能美市大図鑑
KAM  能美市九谷焼美術館
石川県九谷焼技術研究所

 

北國新聞掲載(PDF)

「一窯一試(いちよういっし)」たゆまぬ挑戦 芸術院会員・武腰敏昭さん死去、悼む声(1MB)(PDF文書)

 

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