九谷焼作家 故・武腰敏昭さん
登録日:2022年8月26日
『甦』世紀をこえて〜九谷陶芸村のモニュメント
新たな表現を求めて壮大なプロジェクトにも参加しました。市から依頼された九谷焼の産地をイメージした記念碑。陶芸で日本最大級のモニュメントとなり、高さ11メートル。6万枚もの陶板を使い、3年がかりで完成しました。依頼を受けてしばらく考えた時、鋭角的なものだと時代を超える力がないのではないかと考えました。そこで昔の銅鐸の形状をとらせていただいて、そこに森羅万象を表現しておく方が逆に言えば何百年も残してもらえる、そんな思いで作っています。
左:鉛筆と定規で丁寧に描かれたモニュメントの図面。陶板の割り振りまで細かい指示が書き込まれている。
右:能美市和田山1号古墳から出土した華やかな形状をした青銅製「六鈴鏡(ろくれいきょう)」をモチーフにした扉のデザイン画。 いずれも個展「わが人生の歩み」より
敏昭さんの奥様、糸路さんが当時を振り返り「陶器は焼くと15%ほど縮むため、親子3人でずっと計算をしている毎日でした」とのこと。 写真は個展「わが人生の歩み」より
“自分の原点は九谷焼にある”
モニュメントの完成後、50代半ばから九谷焼の産地ということを優先したいと思いが出てきました。地元の産業でもあるし、産業を生かした中で自分をどう表現するかということは、自分の目標は最終的にそこにあったのかもしれません。そこから九谷焼の絵を生かす器の形をとことんまで追求します。
鉛の入っていない無鉛釉薬もこの時期から本格的に開発を始めます。透明感のある新しい色ができるまでとことん研究を重ねました。
69歳の時の作品で日本芸術院賞を受賞した平成21年(2009)第41回日展「湖畔・彩釉花器」などを制作してきました。いかに捨て、いかに良くしていくかが大事なわけですが、芸術は正解のない世界です。答えらしきものがあっても正解とは言えない。パーフェクトなものはないんです。常に可能性を考えながら作り出していくようにしています。そして工芸品であることを、九谷焼とは何かを問い続けています。
平成21年度(第66回)日本芸術院賞「湖畔・彩釉花器」日本芸術院所蔵
武腰さんが生み出した九谷焼。素地のフォルムに合わせ垂直や水平を意識した独自の筆づかいもこの時期に生み出されます。
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