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九谷焼作家 福島武山さん

更新日:2020年8月11日

フランスエルメス社からのオーダーで描かれた腕時計の文字盤
フランスエルメス社からのオーダーで描かれた腕時計の文字盤(2019年4月撮影)

 

この場所は当時からいろんな方面の先生方が多いんです。九谷関係の歴史ある5、6代続いている方もいます。そういう方たちは、人に教えることに隠し立てをしていないんです。皆さん若い人を育ててやろうっていう気持ちが強いので、いろいろ習うことができました。スケッチや運筆も習いに行きましたし、素地屋さんにも親しくしてもらいました。また民俗とか歴史に詳しい人もいて、たくさん教えてもらいました。人に育ててもらったというか、影響が大きかったと思います。それで、教えてもらえばあとは自分で工夫するっていうことが大切で、先生から教えてもらったことをそのままやるのではなく、自分で新しいものを加えていくことで伝統となっていくと思います。

 

福島さんが仕事の中で一番好きな瞬間。

 

白磁に向かって集中して無心に筆を走らせるときが体が楽でリラックスしていて一番幸せな瞬間かもしれません。ほんとに仕事にあたわったといいますか、もう好きっていうことじゃないね。もう天命のようにここに座って描いているのが一番幸せなときですね。それから自然も豊かですよね。散歩したり、ちょっと目が疲れたとき外へ出たりとか。ありがたいことに正面に白山が見えるんです。きょうは白山が夕焼けで染まっているとか。一年続いて見える白山は本当に楽しみです。

微笑む福島さん

 

赤一色だからこそ表現できるもの。線について思うこと。

 

九谷焼にはいろんな色あるんですけど、赤の絵の具が一番細く描ける、長く描けるむらが出ない絵の具なんですよね。ですから、その赤だけによっていろんなことが表現できる。昔の物語であったり、例えば森羅万象・・・例えば風や雲、水などの流れや変化、そういう表現を抽象的にすることもできますし。赤一色でもものすごく広い世界が表現できると思います。不自由なところもあるんですけど、そこにまたこだわることによって新しい表現もできますし、細い線、太い線、例えば速い線、遅い線、小さい点、見えないような点と限りのない面白い仕事だと思います。

線の綺麗さ正確さでいうと、20年から25年目が一番綺麗な線が引けたと思います。けどそれは線が綺麗なのであって、見る人がほっとする線ではないかもしれません。赤絵は細かさによってみんなびっくりする面があるんです。わー、すごいなっていうことがありますが、後々はその少ない線とか柔らかい線で残せるものができれば一番いいのですが・・・なかなか難しいんですよ。ですから実演中にお客さんと笑い話をしながら紙の切れ端に描いている線が一番綺麗だったりするかもしれないです(笑)。何のこだわりもなく、売り物を創っている意識も何もなく自然にしゃべりながら描いているから。いつもそういうような心持ちが自分の作るものにも出てくればいいですね。純粋な。もう欲も全部なくなればそういうことになるかもしれません。いいものを作りたいとか、線を綺麗に描きたいとかいうのは全部、欲ですから(笑)。なんだか深い話をしましたけど、そういうことも話しながら思いました。ずっと制作に追われている現状でその境地に達するのはまだ先かもしれませんが、少しでも納得のできる綺麗な線を引きたいと思います。

恵比寿大黒天を描画中の福島さん
恵比寿大黒天を描画中の福島さん(2019年8月撮影)

 

能美市と九谷焼と赤絵

 

何かの記事で「九谷が福島を呼んだ」っていうタイトルを付けてもらったことがあるんです。私は能美市へ来てなかったらどうなったのかな。高校卒業して8年間印刷会社で働いてました。その会社は私が60歳定年までいたとしても廃業して残らなかったんですよね。九谷があったから私が今日生かされていろんな人と出会うこともできたし、九谷の赤絵に出合ってほんとに僕の人生は拓けたと思いますし、感謝以外は何もないです。絶えず思っていることは、昔、赤絵を描いて素晴らしい作品を残したすごい人たちがいるので、いつそこまでの境地に到達できるか分からないけど、目指すものがあるっていうのも幸せ。初代の武腰泰山さんとか中村秋塘さんとか浅井一毫、竹内吟秋とかいう人たちの赤絵は緻密で上品ですね、沢山のお弟子さんも育てていますし。そういうものがずっと私の目標として残っているっていうのも幸せですね。

福島さんと娘の礼子さん 福島礼子さんの作品

娘の有生礼子さん
作家の福島礼子さん

 

観光の三元素の一つ、窯元。

 

この間、中島誠之助さんの娘さん、森由美さんが僕のとこに取材に来てくださって、その中で観光の目玉として元気の出る元素のことを「蔵元」「窯元」「湯元」っておっしゃってたんですが、能美市にはこれが全部揃っています。私はこの言葉を大切にしたい。窯元は能美市の一つの大きな売りなので、市も最近すごい力入れてくれて、能美市に池原義郎さん設計の浅蔵五十吉美術館(現能美市九谷焼美術館|浅蔵五十吉記念館|)と小松市に隈研吾さんの設計のCERABO KUTANI(九谷セラミック・ラボラトリー)ってあるのですが、その2箇所で若手の展示会next展を1カ月半ほどするんです。そういうことが起爆剤になればいいなと思っています。

娘(福島礼子さん)がありがたいことに僕の後継者として少しずつですけど注目浴びてきています。本人には教える上で厳しいことも言いますが温かい目で見ています。あと孫が4人いるんですけど、そのうちの誰かがもしかしたら継いでくれる可能性もあるかなと、かすかな希望を抱いています。子どものときの絵とかを見ると素質のある子がいますから、つないでくれるとうれしいなと思っているんです。そしてその世代になればまた「能美市の九谷はすごいぞ」っていうようなことになって、またこっちへたくさんの人が来るような時代が来ないかなと。以前のようにたくさんの職人さんはもう望めないと思いますが、産地能美市としていいものを作る人が育てば、人が人を呼んでいくと思います。研修所を卒業して地元の窯元や材料店の息子さんとの出逢いで結婚を機に住みはじめたという話も聞くようになりました。その人たちはみなさん絵を描いていますから希望があります。能美市佐野町というのは、九谷焼ではほんとに大きな名前なんです。「茶碗まつりの佐野か」っていろんな人が知ってたんです。それがまた「すごい九谷焼を作っている佐野か」って言われるようになればいいですね。

見上げる福島さん

 

 

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