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九谷焼作家 武腰 潤さん

登録日:2024年1月17日

2-01 

「花王」 牡丹の大絵皿(部分)

 

その作品から迸る生命力を感じるか。

見栄を張るとか上手に描こうとか、お金を儲けたいとかいうところに出発点が来ているから、先に進めなくなるんです。私は九谷焼美術館の館長をしていて、年に一回、小学生の子どもたちの絵葉書のコンテストがあって、入選したものはそれを加賀市の絵付けの職人さんが絵皿にのせてくれるんです。そうすると低学年の人の方がいい絵を描いてますね。やはり低学年は感性で描きますから。高学年になると理性で描いてしまう。理性で描くということは上手に見せたくなってくるんです。本当の画家というのは感性でいいんですよ。もしも後輩たちにいうとしたら、理性に囚われてはいけませんよ。感性を大切にしてください。でも一番大事なことはそれを「自分で気づくこと」なんですよ。私も自分の作品が非常に悪かったと気づけたのも、大学3年でセザンヌに没頭したり、自分で勉強したおかげだと思いますよ。本気の勉強をしないと気づかないですから。ですから、「金儲けしようとか、いい絵を描こうとか、上手に見せたいとか、全て捨てなさい」ですよ。だから教えることがないんですよね。己を律することしかないんです。私はこの歳までずっと自分を曲げないでここまで来たつもりなんです。なのでものを描くことで全然苦しまないんですよ。上手に描こうとまず思わないし、媚びてはいけないんです。

2-02

鴇二様の角壺(部分)

 


線のデフォルメ−武腰潤の表現〜金子賢治
西武池袋での展覧会のために書かれた作品評

最近、武腰潤の作品に元気な「鴾」が活発に動いている。伝統工芸品展の『鴾の絵皿「昔日」』(49回優秀賞)をはじめ、『磁の箱「鴾の風景」』、『角の鉢「蓮田の鴾」』など。そして特に、2006年度日本陶磁協会賞を受賞した際の、『陶説』の特集に掲載された『「鴾の風景」香のオブジェ』の鴾は真横から捉えたその堂々たる姿が印象的である。この鴾の真後ろを振り返る姿態は、奈良時代盛期の鳳凰や鸚鵡文に代表される輝かしい模様の歴史を背景にしている。さらにそれを、いわば線的デフォルメとも言うべき作者独特の感覚のフィルターを通して現代の模様に仕上げているのである。
それは古九谷や日本の模様にごく一般的な写実を基礎におく曲線的輪郭線によって作り出されたものではなく、何か厚く堅い型紙を切り抜く際に生ずる直線の連続に似た輪郭線を持っているのである。
その陶磁協会賞は武腰に三輪和彦、加藤清之が受賞した。その授賞式のスピーチで、加藤の作風をスター・ウォーズの戦艦か宇宙都市のようだと述べたが、武腰の鴾の魅力も実はこうした新しい時代の感覚を持っている。
鴾だけが武腰の模様ではない。ほかに特徴的なものとして川蝉、雀などの小鳥、そしてたっぷりとした紫色で描かれているいかにも九谷の伝統を思わせる牡丹など。小鳥は先に述べた曲線的輪郭が優勢だが、川蝉になるとかなり線的デフォルメの度合いが強い。そして今回出品されている牡丹を古九谷、再興九谷の例と比べると、その特徴は明らかである。曲線的輪郭に花弁の脈を細かく入れた実写的な昔のものに比べ、武腰の牡丹は線的デフォルメを多用し、紫で塗りつぶすのみである。
この様式的な細かい配慮が作者ならではの現代に通ずる新しい表現を生み出す。それが全面的に横溢したのが鴾である。それは何かスターウォーズならぬ、デジタルゲームかアニメの仮想現実表現の雰囲気に通ずる。それが特異な新鮮さを与えているのである。

 

 

2-03

武腰 潤 氏

陶歴

1948年 2月11日能美市寺井町(現在)に生まれる

1970年
 

金沢美術工芸大学日本画科卒業、昭和47年北出不二雄・帖佐美行に師事 
1974年 日展初出品入選。 
  以後、成形技法にタタラつくりを主に用い色絵磁器の製作に専念
1979年 日本新工芸家連盟設立に参加 審査員を歴任
  帖佐美行(文化勲章・彫金家)に薫陶を受ける

2-04

日本新工芸展会場で三笠宮崇仁親王ご夫妻に作品をご説明する

1984年 個展 西武百貨店本店 以後高輪会及び西秀会出展 
1991年 個展 銀座和光ホール 以後現在まで3年毎開催 
  日展 特選受賞 作品「はな」敦井美術館所蔵1994年
  日展 特選受賞 作品 「赤日億ふ」方壺 個人像
1995年 個展 THE FINE ART SOCIETY PLG(於:ロンドン)以後4年毎3回開催
  この間ビクトリア&アルパート美術館(V&A)に鴇の絵皿等3展収蔵される
1999年 日本の工芸[今]100選展 出品(於:パリ 主催NHK)
  BS2 やきもの探訪“舞うがごとし色絵の美”出演
2001年 メトロポリタン美術館収蔵 作品「翡翠の絵 長瓶」
  イェール大学美術館収蔵作品「香炉」「笹の器」
2002年 個展 日本橋三越本店 以後3年毎開催
  日本伝統工芸展 朝日新聞社賞受賞 作品「昔日」鴇の絵皿
2004年 日本伝統工芸展 奨励賞受賞 作品 磁の箱「笹生」
2006年 五都美術21世紀展 出品
  創と造展 出品
  個展INTERNATIONAL ASIAN ART FAIR
  JOAN B MIRVISS LTD(於:ニューヨーク)

2-05

JOAN B MIRVISS LTDのサイトより©JOAN B MIRVISS LTD

  フィラデルフィア美術館収蔵 作品「翡翠群れる」磁の箱 
  ニューアーク美術館収蔵 作品「路傍の鳥」方壺 
  ミネアポリス美術館収蔵作品「翡翠の絵 長瓶」「翡翠の香炉」 
2007年  2006年度日本陶磁協会賞受賞 
  個展“東美アートフェア春”東京美術倶楽部 
  日本伝統工芸展 監査員就任 
2008年  三越美術100年記念「ヌーベル・エル美術の今日展」招待 
2009年 日本陶芸展 招待作家就任 以後歴任
  第32回 石川テレビ賞 受賞
2010年 個展 JOAN B MIRVISS LTD(於:ニューヨーク)
  BS2 美の壷“九谷焼”出演
2011年 銀閣寺「東北大震災平和茶会」招待出品 ’12年 金閣寺
2012年 第1回室生犀星文学賞 正賞作品制作 以降5年制作
  ボストン美術館収蔵作品「雀の匣(はこ)」
2013年
 
高等学校芸術家美術書教科書「工芸【I】」指導書掲載 作品「笹の絵方皿」
  「工芸からKOGEIへ」招待作品(東京国立近代美術館工芸館)
2014年 世界文化功労賞 受賞
  ウォルターズ美術館収蔵 作品「山蝉の風景四陵の壺」他9点収蔵
2016年 石川県立美術館 館長 就任
2017年 個展 JOAN B MIRVISS LTD(於:ニューヨーク)
  パネルディスカッション“古九谷”(於:メトロポリタン美術館)
2018年 古九谷帰郷 “牡丹の大皿に観る筆の冴え”展 HNK金沢出演
  「平成の百工比照」“九谷焼”に選定 映像記念金沢市
2019年 石川県無形文化財保持団体 九谷焼技術保存会会長就任
2021年 第41回伝統文化ポーラ賞優秀賞受賞
   
他個展: そごう及び西武百貨店 岡山天満屋
  心斎橋大丸及び大丸各店 小倉井筒屋
  宇都宮東部百貨店 名古屋松坂屋 他多数

 2-06

「花王」牡丹の大絵皿

2-07

鴇三様長角壺

2-08

翡翠の風景長角瓶


 

お問い合わせ先

市長室 広報広聴課

電話番号:0761-58-2208 ファクス:0761-58-2290