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天狗壁

更新日:2022年12月12日

天狗壁 

 岩本(いわもと)町にある「天狗壁(てんぐかべ)」は、集落の東北端に位置し、手取川にそそり立つような岩壁である。大きく露出した凝灰岩(ぎょうかいがん)が手取川の激流に削り取られ、垂直にそびえる絶壁となっている。

 松が生い茂り、断崖の岩肌とのコントラストが美しく、古来より天狗が棲んでいるという伝説がある。別名「天狗山(てんぐやま)」とも呼び、白山三社の1つである岩根宮(いわねぐう)が元々建立されていた所とも伝わる。

 頂上には「御座岩(ございわ)」と呼ばれる大岩があり、天正5年(1577年)に越後の上杉謙信(うえすぎけんしん)が、その美しさを讃えたと伝えられている。

 天狗壁には4つのトンネルが掘られており、弘化4年(1848年)の二ヶ(にか)用水の隧道(ずいどう)が一番古く、その他、明治32年(1899年)に掘削された宮竹用水の隧道、昭和6年(1931年)に完成した北陸鉄道能美線のトンネル、昭和44年(1969年)に和佐谷(わさだに)までの通路として開通した林道(鍋谷和佐谷線)のトンネルがある。

 このうち、二ヶ用水隧道は、江戸時代に岩本と灯台笹(とだしの)の両村が加賀藩の許可を得て、越中の椎名道三(しいなどうさん)によって、明り取りと水量調整の役割を兼ねた小窓を付けながら、手取川沿いを掘ったものである。明治14年(1881年)には、手取川の河床(かしょう)が低くなったため通水できなくなり、宮竹用水隧道が完成した時には、取水口管理のための通路として利用された。

 また、明治から昭和初期まで石材の切り出しも行われており、その跡が現存している。近代の産業振興を担った当時の人々の足跡を今に伝えている。

 古から人々の信仰を集めた一方で、人々の生活様式の変化に合わせて掘削されてきた側面の歴史も持ち、人々の生活に影響を与えてきた地といえる。

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