辰口温泉「まつさき」に行ってきました。
登録日:2020年3月31日
辰口温泉「まつさき」にて(2019年11月撮影)
江戸、天保七年創業。小説「海の鳴る時」の舞台にもなった、明治の文豪、泉鏡花ゆかりの温泉宿。老舗としての風情は残しながら、源泉露天風呂をはじめとする設備は充実。庭園に囲まれた料亭旅館としても知られ、新館・本館それぞれに厨房を持ち、それぞれの料理長が地場の食材などで腕を振るう懐石料理が評判です。遠く奈良時代に白山を開いた泰澄によって開湯され、多くの人が傷を癒やしに訪れたという辰口温泉。室町時代に手取川の洪水によって泉源が埋没し一時途絶えたものの、江戸時代天保七年に当旅館初代の甚四郎が新泉源を発掘し「松崎旅館」を創業。ふたたび辰口温泉の歴史がはじまります。当時の記録によると、宿泊客は宿の手前で服を改めてから来泊するほど格式ある旅館だったとされています。
まつさき旅館でまずお客さまをお迎えするのは1500坪の松泉湖庭園。松泉湖に架けられたエントランスへと続く回廊を渡りながら池に目を落とせば、錦鯉がお客さまをお出迎えるかの如く優雅に泳ぎながら寄ってきます。そしてその松泉湖を取り巻くように茂る野趣あふれる樹々。桜が咲きほこる春、蓮の花がほほえむ夏、秋には樹々が美しく紅葉し、冬には庭のすべてが楚々とした雪化粧をします。風呂上がりの夕涼みや、朝食前後の散策でも、四季折々の風情がお楽しみいただけます。
源泉は庭園の一部より掘り出され、泉質は弱アルカリ性ナトリウム硫酸塩・塩化物泉で、糖尿病や肥満症、冷え性、婦人病、健康増進に効果のある滑らかな温泉です。大浴場は歴史を刻む安土桃山庭園に面しています。循環加温をした熱め40度の大浴槽とぬるめの源泉温度(36.5度)そのままの掛け流しの源泉風呂があり、温度差のある二つの浴槽に何度か繰り返して交互に入る「交互浴」ができます。体の血行がよくなり疲れが取れたり、肩こり、腰痛などにも効果があります。展望露天風呂「木犀(もくせい)」は、のびのびと気持ちの良い総檜造り。「玉竜(ぎょくりゅう)」は野趣味あふれる岩風呂風の露天風呂です。ほかにもそれぞれに内湯やサウナ、露天風呂には寝湯もあります。霊峰白山、自館の庭園を望め、冬場には庭園内で巣作りをするしらさぎの姿を見ることができるかもしれません。しらさぎは近隣の山中温泉や岐阜県の下呂温泉、四国・愛媛県の道後温泉などでもあるように開湯の発端となる伝説が多い鳥ですね。
(1)〈男湯〉露天風呂付大浴場「瑞泉の湯」 (2)〈女湯〉露天風呂付大浴場「八千代の湯」 (3)展望露天風呂「木犀(もくせい)」通常昼と夜が女性、朝が男性用 (4)展望露天風呂「玉竜(ぎょくりゅう)」通常昼と夜が男性、朝が女性用 (5)庭園に生息するしらさぎ (6)春にはカワセミの姿も
松泉湖庭園内にある茶室「無量庵」。全室で客室露天風呂が楽しめる新館 鳳凰に宿泊されるお客様は、来館時にお抹茶のサービスが受けられます。茶室へと向かう廊下にはハート型の窓があり、格式高い旅館の中にあるとてもかわいい撮影スポットです。茶室の円窓(えんそう)からも四季折々の風景が広がり、まるで一枚絵のような和の芸術作品を見ることができます。角のない、永遠に形を変えない円が、私達に癒やしの効果をもたらしてくれますよ。
(1)雪化粧した茶室「無量庵」 (2)茶室に向かう廊下にはハート型の窓が (1)桜が窓一面に広がる春の「無量庵」 (2)茶室の円窓(えんそう)。角のない円には癒やしの効果も
本館のお部屋からは、四季折々の庭園の風情が満喫できます。本館は四つの棟に分かれており、中でも瑞雲は部屋数が一番多く、当館の庭園の景色を眺められる情緒あるお部屋として大変人気です。露天風呂付客室は、松寿庵、桃山庵にございます。鳳凰ではお部屋でも温泉をお楽しみいただけるように客室の露天風呂、内風呂すべてに庭園内から掘り出した源泉を引いているそうです。内風呂もいつでも湧いているので、ゆっくり体を温めてから露天風呂に入れますよ。お部屋には、落ち着いた設えの和室とツインベッド付きの寝室を備えた、二世代のご家族でもゆったりとくつろげる数寄屋造りの和洋室のお部屋もあり、広縁のカーテンを開け放てば、青々と樹々がしげる庭園をまるで一幅の絵画のように眺めることができます。庭園の風情を楽しみながら、旅のひとときをゆっくり過ごすのもいいですね。
また、段差をなくしたバリアフリーのお部屋もあり、ご高齢の方や車いすを利用されているお客さまも快適に過ごせる配慮がされた客室もあります。
(1)バリアフリーの和洋室のお部屋 (2)室内は段差を極力無くしたフラットフロアで、扉もスライド式になっています (3)1台はリクライニングベッドでリモコンでの操作が可能です (4)リクライニングベッドは取り外しのできる手すりが設置 (5)トイレも車椅子で出入りができる大きさで手すりも設置されています (6)車椅子のままでも入れる浴室はガラス戸を開けることで露天風呂としても楽しめます
そしてお料理は、金沢の名立たる料理旅館で研鑽を積んだ料理長が丹誠し、金沢の旬の素材をふんだんにつかった新館鳳凰の「鳳凰懐石」。お客さまの食べる頃合いを見計らって一品一品心を込めて作られるので、できたての味をお楽しみいただけます。ご予約時のご連絡で、お子さま向けの離乳食やお子さま膳の用意もしていただけるそうです。また、年間に550頭ほどしか出荷されず地元でもなかなか手に入らない貴重な能登牛を、にぎり寿司、ステーキ、おすすめの三種のお料理にした「鳳凰特撰能登牛懐石」や、量は控えめに高級食材をメインにして質を重視した鳳凰懐石、寿司と和牛ヒレステーキ付贅沢懐石など、どれもこれも美味しそうなものばかりです。
(1)金沢の旬の素材をふんだんにつかった圧巻の鳳凰懐石 (2)量より質が重視された鳳凰懐石 (3)寿司と和牛ヒレステーキ付贅沢懐石
金沢に生まれ、明治時代を代表する小説家として知られる泉鏡花。幼い頃に母を亡くした鏡花は、当時辰口温泉に住んでいた叔母にたいへん可愛がられ、叔母をたびたび訪ねるうちに、辰口温泉で働く美しく艶やかな芸妓さんたちの姿を通して、女性に対する感性を磨いていったとも云われています。そして、鏡花は当館に逗留しながら当時のまつさき旅館を舞台とした『海の鳴る時』を執筆。鏡花の小説家としての出発点となった旅館と言えるかもしれません。
そして時が経った今も、金沢の近郊に位置しているため県内外の多くのお客さまから金沢の奥座敷として親しまれています。上質な旅におすすめしたい日本の宿です。
「まつさき」の女将 松崎富志永(としえ)さんと
動画メッセージ
金沢・辰口温泉 まつさき
〒923-1245 石川県能美市辰口町3-1
TEL 0761-51-3111 FAX 0761-51-3114
https://www.matsusaki.jp/
地図情報
石川県能美市辰口町3-1
お問い合わせ先
産業交流部 観光交流課
電話番号:0761-58-2211 ファクス:0761-58-2297