遣水観音山
更新日:2022年12月23日
仏大寺(ぶつたいじ)町の遣水観音山(やりみずかんのんやま)は、集落の東南にある通称「観音山(かんのんやま)」と呼ばれる標高402mの山であり、加賀平野からは独立峰に見える。能美市仏大寺町と小松市原町との境に存在し、別名「遣水山(やりみずやま)」と呼ばれている。
観音山は、白山に連なる山々でも目立つ一孤峰(いちこほう)で、明治中期まで女人禁制の山として、古くから白山信仰の霊場となっていた。中腹には、修験者によって建立されたと伝わる「遣水山観音堂(やりみずやまかんのんどう)」があった。観音堂の灯りが海上からの目印となり、漁師など海を生業(なりわい)とする人々からの崇拝を集めていた伝承もある。
観音堂には、白山開山の奈良時代の僧泰澄(たいちょう)が彫ったとされる木像の十一面観世音菩薩像(じゅういちめんかんぜおんぼさつぞう)が安置されていたが、平成5年(1993年)の火災で、観音堂と共に焼失した。現在は跡地に、休憩所が設けられている。
麓の仏大寺町側の登り口には、観音山からの水が湧き、観音山霊水堂として整備され、大勢の人が軟水を汲みに訪れている。この湧水は、平成20年(2008年)に環境省選定の「平成の名水百選」に認定された。
観音山周辺には、カンノンダニ(観音谷)・ジゴクダニ(地獄谷)・コモリダニ(籠り谷)・オミチ(御道)・ウバガショウズ(乳母が清水)・センゴクダオシ(千石倒し)・ウシオトシ(牛落し)などの地名が残っており、仏大寺八幡神社には、鎌倉時代以前の作とされる本地地蔵菩薩像(ほんちじぞうぼさつぞう)が安置されている。
遣水観音山は、古から修験者などの白山信仰の拠点として、航海者の崇拝を受けてきた霊山であり、現在も多くの人々が訪れる名勝である。