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絹本著色白山曼荼羅図

更新日:2023年8月2日

曼荼羅図左曼荼羅図中央曼荼羅図右

 この絹本著色(けんぽんちゃくしょく)白山曼荼羅図(はくさんまんだらず)は3幅合わせて1図とし、白山とその境域とを景観描写的に表している。図中各所には短冊型に、その場所名を書き入れている。軸裏には「寛政元年己酉秋九月穀旦 加賀国金沢府下之匠司 清水治左衛門尉峯充 奉納焉 芸台南肇敬書」の墨書銘がある。

 寛政元年(1789年)9月に、白山比咩(しらやまひめ)神社本殿の建立などに関わった加賀藩御用大工の清水峯充(しみずみねみつ)が寄進したものだが、曼荼羅図の制作者及び制作年代は不明である。

 「芸台」の号を持つ金沢の文人楠部肇(くすべはじめ)が制作した説がある。宝暦10年(1760年)誕生の楠部作とするならば、天明年間の20代の作ということになろうか。楠部は、金沢町会所記録方・横目肝煎を歴任し、『加賀古跡考(かがこせきこう)』などを記した能書家として知られている。一方、楠部の画の実績は不明であり、楠部誕生以前の元禄年間に加賀禅定道の繁栄に尽力した宝代坊(ほうだいぼう)澄隆(ちょうりょう)が、既に絵解きに使用していた説もある。

 白山の遠望は、なだらかで女性的ではあるが、富士山・立山とともに三名山とされ、主峰の御前峰は2,702mで、白山比咩神社奥宮がある。白山三馬場(加賀馬場・越前馬場・美濃馬場)のうち、加賀馬場(禅定道)と白山三所権現(御前峰・大汝峰・別山)の仏神の座とされた主峰群を描いている。

 白山三所権現といわれたのは、この御前峰(ごぜんがみね)の白山妙理権現(菊理姫命。本地は十一面観音)と大汝峰(おおなんじみね)の越南知権現(大己貴命。本地は阿弥陀如来)と別山(べっさん)の別山大行事(大山祇命。本地は聖観音)の三神三仏である。この図は、右側に別山を置き、中央に御前峰「大御前」、左側に大汝峰「御内陣」を描き、朱色の点線で禅定道を表現しており、図の中程に加賀室・越前室・美濃室がみえる。

 この白山曼荼羅図は参詣曼荼羅として、絵解きに使用されたようであり、開山の僧泰澄(たいちょう)の伝説や女人禁制にまつわる話が随所に描かれている。法量・構図ともにスケールが雄大で絹本賦彩、写実的な山水景観が生き生きと写されている貴重な史料である。

 

絹本著色。3幅。

左軸 幅89.5×高228.0cm(本紙のみは幅80.5×高159.5cm)

中央軸 幅89.0×高227.0cm(本紙のみは幅81.0cm×高159.5cm)

右軸 幅88.5×高226.0cm(本紙のみは幅80.0cm×高159.5cm)

曼荼羅図左拡大

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