九谷焼作家 山田 義明さん
登録日:2023年8月10日
桜に鶚(みさご)図 白萩釉大皿 素地は萩焼の岡田泰氏 (|浅蔵五十吉記念館|にて撮影)
緑ヶ丘美術館(生駒市)蔵
生涯のお客様
私たちの仕事は個展などを通じ、お客様と接する機会が多くあります。その中でも大変長くお付き合いをさせていただいた方もいらっしゃいます。35年ものお付き合いがあったご主人が5年ほど前にお亡くなりになった時に奥様からご連絡をいただき、駆けつけました。そのご主人の枕元にお花とともに私の作品がたくさん並べられていたのを見た時、感極まってしまいました。
また、ドイツ人の外交官とご結婚された方で、世界各地のご主人の赴任先からお便りをいただきましたが、私の作品をいつも赴任先へも持って行かれていたそうです。
やはり30年くらい前からになりますが、ニューヨーク旅行や、お食事もよくご一緒したお客様です。お子様が生まれてからのお付き合いになりますが、そのお子様が成長し、ご結婚され、今度は生まれたお子様を連れて、皆さんでお越しになったこともありました。三世代になる繋がりを持たせていただいています。
かれこれ55年も送っていただいているじゃがいも
これはお仕事でのお付き合いではないのですが、20歳の頃、放浪した北海道の旅の中で、10日間アルバイトをした農場から、今も毎年ジャガイモを送っていただいています。もうかれこれ55年にもなります。
個展などで知り合い、名古屋、仙台などと全国から毎回駆けつけてくださるお客様。そういうお客様と繋がっていられることに感謝しかありません。私にとっては、お客様から生涯の“知己“の方々となりました。
九谷はこれから
私たちの世代は、師につき、また勉強会等を通して、公募展に出品し切磋琢磨しながら九谷を盛りあげてきました。高度成長期でもあり、日本中が忙しい時代でした。
今、九谷の歴史を振り返ってみると、古九谷から始まり、木米、吉田屋、飯田屋、永楽、庄三とその時代ごとに様々な技法が生まれてきました。近年では、昭和の時代、故・三代徳田八十吉氏が、それまでの九谷焼とは全く異質な“彩釉”なる技法を発表し、また、吉田美統氏が“釉裏金彩”の技法を確立しました。両人とも重要無形文化財の保持者(人間国宝)まで極め、昭和・平成の時代をリードされました。また、故・武腰敏昭氏が無鉛釉の開発と色絵を進化させ、芸術院会員に登りつめ、九谷の土壌にさらなる厚みを加えています。このように九谷焼は五彩を基本に、洋絵の具(赤絵)和絵の具(青九谷)、さらに染(下絵)、白磁と実に多様な要素を駆使して今日に至ったのです。九谷にはそういった様々なものを受け入れる包容力があるのだと思います。今、九谷の若い人たちの作風を見るにつけ、一つの新しい風(色)が吹いているように思います。この新しい風が今後どのように育っていくのか?それは楽しみなことでもあります。彼らもまた、九谷という包容力のある土壌の中で育まれてきたものであり、古九谷から続く九谷の歴史の中の1ページであることを自覚し、そういった周りの環境に感謝しなければならないと思います。ただ時代が変わり、技法が変わっても、変わらないものがあります。個々の技術や能力も重要な要素ではありますが、最後はその人の持つ“人間力”が作品を創りあげるのだと私は思います。
私はハンコ絵描きから出発し、たくさんの人たちに支えられ今日までやってきました。それは九谷という大きな器の中で育ったということでもあります。“一生懸命”が高じて周りの人たちにもご迷惑をおかけしましたが、長く一つのことを続けてきたことが大事なことのように思います。“続ける”そして九谷焼が永劫に“繋がる”ことを願っています。
山田義明 プロフィール
日本工芸会正会員
創造美術会顧問
伝統工芸士
石川県立九谷焼技術研修所講師
石川県指定無形文化財九谷焼技術保存会会員
1948年(昭和23)0歳 | 石川県能美郡(能美市)寺井町に生まれる |
1974年(昭和49)26歳 |
創造美術会、山近剛氏に師事 |
1975年(昭和50)27歳 | 第28回創造展入選 以来連続入選 |
三代武腰泰山(義之)氏に薫陶を受ける | |
1976年(昭和51)28歳 | 九谷新作展最高賞受賞 |
1977年(昭和52)29歳 | 第30回創造展新人賞受賞 |
1978年(昭和53)30歳 | 第1回伝統九谷工芸展入選 以来連続入選 |
1981年(昭和56)33歳 | 創造美術会、会員に推挙される |
1982年(昭和57)34歳 | 第29回日本伝統工芸展初入選 |
1983年(昭和58)35歳 | 第6回伝統九谷工芸展優秀賞受賞 現代美術展入選 |
石川の伝統工芸展入選 以来連続入選 | |
第7回伝統九谷工芸展九谷連合会理事長賞受賞 | |
1984年(昭和59)36歳 | 現代美術展入選 |
1985年(昭和60)37歳 | 日本工芸会正会員に推挙される |
1986年(昭和61)38歳 | 創造展会員賞受賞 |
1987年(昭和62)39歳 | 第11回伝統九谷工芸展連合会理事長賞受賞 |
1988年(平成元)40歳 | 創造展「北華賞」受賞 |
1990年(平成2)42歳 | 横浜高島屋にて個展 以後3回開催 |
石川の伝統工芸展奨励賞受賞 | |
1994年(平成6)46歳 | 日本橋三越にて個展 以後9回開催 |
1995年(平成7)47歳 | 創造展「会員賞」受賞 |
1998年(平成10)50歳 | 創造展「東京都知事賞」受賞 |
1999年(平成11)51歳 | 伝統工芸士認定 |
2000年(平成12)52歳 | 伝統九谷工芸展にて技術賞受賞 |
2002年(平成14)54歳 | 創造展「会員賞」受賞 第48回日本伝統工芸展 |
入選作「色絵鳥瓜文壷」宮内庁お買上げ | |
2004年(平成16)56歳 | 伝統九谷工芸展にて技術賞受賞 銀座和光にて個展 |
2005年(平成17)57歳 | 伝統九谷工芸展にて次賞(北国新聞社賞)受賞 |
新作陶芸展(日本工芸会)にて「日本工芸会賞」受賞 | |
2007年(平成19)59歳 | 第60回創造展「文部科学大臣賞」受賞 |
2008年(平成20)60歳 | 日本橋三越にて個展開催(還暦記念) |
2010年(平成22) 61歳 | 伝統九谷焼工芸展にて優秀賞受賞 |
石川の伝統工芸展にて奨励賞受賞 | |
2011年(平成23)62歳 | 創造美術会代表に就任~27年 |
2015年(平成27)66歳 | 伝統九谷焼工芸展優秀賞受賞 |
2016年(平成28)67歳 | 伝統九谷焼工芸展にて大賞受賞 |
第63回日本伝統工芸展「色絵山帰来文九角鉢」 | |
宮内庁お買い上げ(過去6回のお買上げ) | |
2017年(平成29)68歳 | 神宮美術館にて野 – 歌会始御題によせて – に |
「野葡萄文九角飾鉢」を出品。伊勢神宮に奉納 | |
2018年(平成30)69歳 | 日本橋三越本店にて個展(古希記念) |
伝統九谷焼工芸展にて大賞受賞 | |
生駒市緑ヶ丘美術館にて個展(古希からの挑戦) | |
石川県指定無形文化財保持団体 九谷焼技術保存会会員に認定 | |
2020年(令和2)71歳 | 春の叙勲にて「瑞宝単光章」拝受 |
能美市表彰「特別功労賞」受賞 |
お問い合わせ先
市長室 広報広聴課
電話番号:0761-58-2208 ファクス:0761-58-2290