辰口温泉の温泉広場には、温泉掘削のいわれを記した石碑とともに、明治の文豪、泉鏡花の文学碑があります。
金沢で生まれ育った鏡花は、幼少の頃から頻繁に辰口温泉を訪れており、小説「海の鳴る時」の舞台にもなっています。記念碑は、彫刻家米林勝二が制作したもので、鏡花のレリーフと共に冒頭の文章が記されています。
幼くして母親を亡くした鏡花は、辰口温泉に住む叔母にたいへん可愛がられて育ちました。本好きだった甥っ子に、叔母は自分の小遣いから本代を渡したといわれています。明治23年の夏、叔母のもとを訪れた鏡花は、そこで後に師事する尾崎紅葉の「夏痩せ」を読んで大変感動し、作家の道を志したといわれています。辰口温泉は文豪泉鏡花を生み出した地といえるかもしれません。